長さ9.8�兪宛紂�重さ112g前後。僅かな個体差あり。
《小判の流出を防ぐ目的の試作品？》
1854年に結んだ「日米和親条約」を切っ掛けに、わが国は開国しました。
ところが、わが国では度々の貨幣改悪で、金１対して銀４という比価になっていました。
これに対して欧米では金１に相当する銀価は15でした。
だから来日した欧米人は、商売をしなくとも、銀貨を持ち込んで小判と交換するだけで、莫大な利益を手に入れました。
これに依って「銀本位制」だった関西の商業が大打撃を受けました。
幕府は遅まきながら1859年と1860年とに小判の小型化をしますが、その間に小判は大流出をしてしまいました。
《竹流金とは何？》
本品の様に棒状に鋳造した金塊を「竹流金」と呼びます。
通貨を竹流金状にした物は「吹き寄せ」とも呼びます。
本品は重さ112g前後。金の含有量は約57%で「天保小判」10枚と同じ金量です。
公式な文献が未発見なので、以下は推測ですが、恐らく天保小判の流出を防ごうとした幕府が対抗策で「欧米の金銀比価で欧米人に取引させよう」と考えて額面を取り払い、西洋のインゴットに似た竹流金を試作した稟議用の通貨と思われます。
「保」と「花押」は天保小判の刻印を流用し、「改印」を打ってないのは「試作品」で流用でない証拠と思われれます。
小判は歴代純金ではないので、表面を金色にする色揚げをしていますが、本品も色揚げをしてあります。
幕末の小栗上野介(1827〜68)の埋蔵伝説に登場する「竹流金」は、これなのかも知れません。
《本品の由来》
本品は1975年に、今井育康雄（育雄）が現役収集家だった頃、著書を見た旧財閥系の家から調査を依頼された物です。
分析用に１つ譲り受け、調べ「試鋳品と思われます」と御報告し、数本入手しました。
その後注意して見ていると「銀貨の吹き寄せ」は稀に市場に出ますが、小判の吹き寄せ（竹流金）は全く見ません。「試作品説」は間違いないでしょう。
もう少し若ければ、調査を進め関係方面に発表し「出世」させて高く売ろうと思っていましたが、近頃「それは次の世代に任せよう」と思い広告します。
情報入手の切っ掛けにしようと、2000年５月に出した事が有ります。
売れましたが「情報」は手に入りませんでした。
その時に詳しく書くスペースが無かったので、改めて知見する所をここに記しました。
天保小判の普通のタイプは、今24万円〜60万円ほどですから、重さ十両分の本品は割安だと考えています。
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